難聴の方を補助する器具に「補聴器」があります。
難聴を起こしている病気を早期に治療すれば難聴も改善しますが、病気の後遺症として難聴が残ってしまうこともあります。
また、一口に難聴といっても、通常の会話が聞き取りにくい程度から、大きな声で話しかけられても聞き取れない方までその程度は様々です。
音が聞こえにくいということは、生活が不便なだけでなく、安全にも支障を来します。
そこで、難聴にお困りで、治療で回復が見込めない方におすすめしたいのが「補聴器」です。
耳鼻科では、様々な程度の難聴の方について、聴力検査をはじめとするいくつかの検査によって現在の難聴の状態を正確に把握し、補聴器の必要性があるのかないのかを判断します。
今まで補聴器を使ったことがない方には、まず補聴器の装用による効果の有無を判定します。補聴器によって効果が得られることが判れば、スムーズな補聴器の装用に向けて、最適な補聴器の選択、調整、装用指導を行います。
最近、補聴器の性能は革新的に向上したものの、補聴器はまだ万人に有効な機械というわけでなく、装着したとたんに誰でも快適に聞こえるというわけではありません。
また、補聴器には、補聴器特有の聞こえ方があり、うまく使うためには、補聴器の聞こえ方に慣れる必要があります。
この点に関してはメガネとは違い、作ったからといってすぐに良く使えるというわけではないのです。
補聴器をより良く使いこなすためには、聞こえ方に慣れるだけでなく、幾度かの機械の調整も必要で、そのために数週間が必要です。
つまり、自分が気に入った補聴器を2週間程度、試験的に使用して頂き、「気に入った、使いやすい」と思えれば、その補聴器を購入して頂ければよいのです。
どうしても自分に合わないと思えば、他の種類を試してみることも可能です。
新しく補聴器購入を考えられている方、現在使用中の補聴器に満足されていない方はお気軽にご相談ください。
補聴器の主な種類は、①耳穴型、②耳かけ型、③ポケット型の3つです。
①耳穴型
耳の中に入る小さな補聴器です。
軽度難聴の方から高度難聴の方までご使用いただけます。
既成のものもありますが、耳型を取って個人個人に合わせてオーダーメイドするものが一般的で、注文から完成までに10日ほどかかります。
自分に合った耳穴型補聴器は、耳にぴったりと納まり、形状が小さいので目立ちにくいというメリットがあります。
なお、耳だれが出る病気の方は使用できません。
②耳かけ型
耳たぶの後ろにかけて装着します。
軽度難聴の方から重度難聴の方までご使用いただけます。
形状は大きなものから小さなものまで種類が豊富ですが、小さなものは耳たぶの後ろに隠れて目立ちません。
最近では、いろいろなカラーが選べておしゃれ感覚で楽しむこともできます。
ただし、夏は汗による故障の可能性が他の種類より大きいというデメリットもあります。
③ポケット型
本体を胸のポケットなどに入れて、イアホンを耳に装着して使用します。
中等度難聴から重度難聴の方までご使用いただけます。
形状が大きいので、お年寄りでもスイッチやボリュームの調整がしやすいというメリットがあります。
その反面、目立ちやすい、コートが邪魔になる、衣服のすれる音をマイクがひろい易い、といったデメリットがあります。
大きく分けて3種類の補聴器ですが、それぞれの種類の中でもメーカーや形状、価格など多くの選択肢があります。どのタイプの補聴器が適しているかは、患者さんが10人いれば10通りと言えます。
比較的安価な補聴器が通信販売やメガネ店などで売られていますが、補聴器もメガネと同じで患者さん一人一人の聴力にあった補聴器を作らなければ意味がありません。
せっかく購入しても、自分に合わない補聴器は結局使わないことになってしまいます。
また、中耳炎などの治療が必要な病気がないか確認することも重要です。
そこで、補聴器を購入される場合は、まず耳鼻科を受診して、ご自分に最適な補聴器を選ぶことをお勧めします。