耳あかは、外から入ったホコリだけではなく、外耳道から出てくる分泌物と、古くなった表皮が混ざったものです。外耳道の皮膚は、約1か月をかけて鼓膜から外側に移動していきます。そのため、外耳道の奥には普通耳あかはありません。
耳あかには乾いた耳あかと、湿った耳あかがありますが、これは遺伝で決まります。湿っているからといって病気ではありません。完全につまってしまうと聞こえが悪くなります。
耳あか専用の除去器具を使って取り除きます。完全に固まっている場合は、耳あかを柔らかくする薬を入れてから除去します。こうすることで痛みなく取り除けます。
耳あかのたまるスピードは個人差があります。また自分で簡単に取れる人もいれば、自分では取れない人もいます。特に小さなお子様などは家庭で耳あかを取るのは危険です。心配であれば耳鼻科で定期的にそうじされることをおすすめします。
3歳以下のお子さんの70~80%が一度はかかります。
カゼをひいた後などに鼻の細菌が耳管という管(くだ)を通って耳に入り、鼓膜の奥に炎症が起こる病気です。
耳の痛み、発熱、耳だれ、耳のつまった感じなどが起こります。痛みを訴えられない小さなお子さんは、夜泣きがいつもよりひどい、なかなか寝ようとしない、機嫌が悪いといったことが中耳炎の重要なサインです。
鼓膜の観察を行ったうえで、中耳の状態を判断します。中耳に細菌が入るのは耳管という管(くだ)で鼻と耳がつながっているためです。
院内で耳を消毒し、鼻をきれいにしてゆきます。抗生物質の飲み薬や点耳薬を使用します。
炎症がひどいようであれば、場合によっては少しだけ鼓膜に穴を開け、ウミを取り出し、熱や痛みを和らげます。
急性中耳炎の治療を怠ると、滲出性中耳炎・慢性中耳炎などに発展し、難聴になることがあります。医師の指示を守り、確実に治療しましょう。
(痛みがとれたからといって自己判断で治療を中断しないで下さい。)
鼓膜の奥に液体(浸出液)がたまる中耳炎です。液体がたまると、鼓膜の動きが悪くなり、聞こえが悪くなります。急性中耳炎をしっかり治療しなかった場合に起こることが多く、他にもアレルギー性鼻炎やちくのう症のせいで起こることもあります。
大人の方は耳のつまった感じがするため、すぐに異常が判りますが、小さなお子さんの場合は痛みがないため訴えがありません。テレビの音を大きくしたり、呼びかけても反応がない時などは注意が必要です。
鼓膜の奥の中耳腔に浸出液が見えます。
聴力検査で難聴の程度を調べ、ティンパノグラムという鼓膜の動きを調べる装置で鼓膜の状況を調べていきます。
始めのうちは週に1回程度通院をして耳の奥につながっている鼻をきれいにします。短期での完治を目指しますが、長期に渡りそうな場合には、積極的な手術が必要なのか、それとも経過を見ながらの治療で済みそうなのかを判断の上、治療の方向性を保護者の方とご相談させて頂きます。
症状がやや重い場合には、鼓膜に少し穴を開ける鼓膜切開を行い、鼓膜の奥にたまった液を排出させる場合があります。また状況に応じて、鼓膜にチューブを挿入し、喚気を促す処置を行います。
院内でもこの処置は可能ですが、小さなお子さんの場合は安全のために総合病院に依頼するケースもあります。
鼓膜に入れた換気チューブです。
治療期間には個人差があります。原因にもよりますが、早ければ1~2週間で治ります。ただし長期間に及ぶ場合は、数年間を要する場合もあります。
どちらにせよ中途半端に治療をやめてしまうと難聴が残る可能性があり、しっかりと通院治療を行う必要があります。
急性中耳炎が悪化したり治療せずにいると、本来自然に閉じるはずの鼓膜の穴が閉じなくなって、そこから耳だれが出ている状態です。
難聴や耳鳴りが起こる場合もあります。耳だれを放置しておくと耳の神経が障害されて難聴が悪化してくることもあります。
慢性中耳炎は急性中耳炎や滲出性中耳炎から起きていることが多く、経過が長いので、まずは耳の中が乾いた状態になるように耳の中をきれいにしていきます。
中耳炎の原因となるばい菌や痛みの程度、耳漏の量によって、内服薬を変更しながら、耳にお薬を入れて炎症をしずめます。
鼓膜の穴がどうしても閉じない場合は、手術を受けて頂く場合もあります。
また、鼓膜の奥にも炎症が起きている場合には鼓室形成術という、中耳の奥の機能を取り戻す手術を行う必要があります。その際は専門病院や手術施設をご紹介いたします。
中耳炎を繰り返したり、慢性中耳炎が悪化することにより、鼓膜の一部が中耳に入りこみ、小さな袋のようになり、そこに白いカス(鼓膜の上皮)が溜まります。
このカスが増殖して周りの骨を溶かし、袋を広げていく病気です。
中耳炎の原因となるばい菌や痛みの程度、耳漏の量によって、内服薬を変更しながら、耳にお薬を入れて炎症をしずめます。
症状が進んでいる場合は手術が必要になります。
中耳腔に入りこんでいる真珠腫をすべて取り除いた上で、中耳の奥の機能を再建する鼓室形成術という手術を行います。その際は専門病院や手術施設をご紹介いたします。
症状が進行せず難聴も進行しないようであれば、定期的な経過観察で様子を見る場合もあります。年齢を考慮しながら患者さんと相談の上、治療方針を決めていきます。
外耳炎とは、耳の中の外耳道がばい菌により腫れたり、赤くなる病気です。多くの場合、耳かきやつめで外耳道を傷つけることで起こります。
痛み、かゆみ、耳だれ、耳のつまり感、耳鳴りといった症状があります。痛みが強い時には夜も眠れないということもあります。
外耳道が赤くなっています
外耳道に白カビが見えます
外耳道の消毒や、抗生物質の軟膏を塗ります。ひどい時には抗生物質を内服する必要があります。
さらに、耳の傷が治る時はかゆくなることが多いのです。この時、かゆいからといって耳の中を触るとまた傷が出来てしまいます。この悪循環にはまると、なかなか外耳炎が治りません。完全に治るまで耳を触らないことが大切です。
耳あかが耳の中につまって起こるものから、中耳炎によるもの、さらには聞こえの神経が悪くなって起こる突発性難聴やメニエル病まで、いろいろな原因で起こります。
特に、突然聞こえが悪くなった場合は、早めに治療をしないと聞こえが回復しないことがあります。
耳の入り口から外耳道、中耳腔、聞こえの神経と続きますが、障害される場所によって全く原因が違ってきます。
特に、聞こえの神経が突然悪くなった場合は、早めに治療をしないと聞こえが回復しないことがありますので要注意です。また、めまいを一緒に起こす難聴は、めまいを繰り返すと聞こえが徐々に悪くなっていくことがあります。
聞こえが悪くなった原因を見つけるためには、耳の中をよく見て、聴力検査をしないとわかりません。
特に、聞こえの神経が突然悪くなった場合は、入院治療が必要な場合もあります。「最近聞こえにくいなぁ・・・」と思っている方は早目に耳鼻科で聴力検査を受けることをお勧めします。
ある日突然、「聞こえなくなる」「耳がポーンとする」「耳鳴り」といった症状が現れます。めまいや吐き気を伴うこともあります。耳あかもなく鼓膜は正常ですが、聴力の低下がみられます。早めに治療をしないと聞こえが回復しないことがあります。
鼓膜の奥にある内耳に障害が起きる病気ですが、残念ながら詳しい原因はわかっていません。ウイルスによる感染説と耳の血液循環障害説の2つの説があります。
数種類の薬剤を組み合わせた治療法を、内服や点滴で行います。この病気に最も効果的であるステロイド剤を使用し、循環改善剤やビタミン剤なども使用します。
同時に過労やストレスを避け、心身を安静にすることも非常に大切です。
改善度に合わせて、約1週間~1,2か月の治療期間を必要とします。
周囲が静かなのに「キーン」というような音が聞こえたり、誰かと会話をしていても、その音が耳から離れないような症状を指します。
耳鳴りは、突発性難聴、メニエル病、中耳炎などによっても起こります。
しかし、原因不明のものが非常に多いのです。
これらは、内耳の有毛細胞や聴神経の障害によって起こると考えられています。内耳の有毛細胞や聴神経が障害されると、神経が異常に興奮し、その興奮が耳鳴りを起こすと言われています。
聴力低下を伴っていないか、聴力検査は必ず行います。加えて、脳に異常がないかMRIなどの精密検査を行うこともあります。
しかし、それ以外の検査はあまり行われていません。本人にしか聞こえない耳鳴りを評価することは極めて困難だからです。
原因となるような病気があれば、まずその治療を行います。
手術で耳鳴りを治すことは出来ないため、一般的に耳鳴りの治療は内服治療が中心となります。具体的には、血液循環改善剤、ビタミン剤、精神安定剤などです。
残念ながら100%効果のあるものはありません。
めまいの症状には、周囲の景色がグルグル回る「回転性めまい」と、体がふわふわ揺れ動く「非回転性めまい」の2種類があります。
めまいは大きく分けると
1)内耳性のめまい
2)中枢性のめまい
3)その他のめまい
の3種類があります。
1)内耳性めまいとは、耳の奥の三半規管の異常で、メニエル病、良性発作性頭位性眩暈症、前庭神経炎などがあります。
2)中枢性めまいとは脳に原因がある場合で、血管障害や腫瘍性のものがあります。
3)その他のめまいとは精神的な病気や血圧や糖尿病、心血管障害などがあります。また、肩こりなど首の異常でもめまいは起こります。
まずは問診が大切ですが、聴力検査や平衡機能検査、血圧測定や血液検査などを行います。さらに中枢に異常が疑われるような場合には脳のMRI検査なども必要です。
要は耳鼻咽喉科の範囲にとどまらず、他科の領域に踏み込んだ総合的なめまい検査が必要です。
めまいの原因にもよります。
内耳性のめまいでは、薬を飲まずに放置していても改善することもありますが、お薬を内服することによって、より早く回復される方が多いようです。
同時に過労やストレスを避け、心身を安静にすることも非常に大切です。
耳鳴りや耳のつまり感とともに突然起こる回転性のめまいで、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。強いめまいは数十分から半日程度でおさまりますが、耳鳴りや難聴は、めまいを繰り返すうちに悪化する傾向があります。
耳の一番奥にある内耳は、リンパ液で満たされています。このリンパ液の量が増えすぎると、内耳の中が水ぶくれ状態になり、めまい、難聴、耳鳴りが起こります。なぜリンパ液が増えてしまうのかは、現在のところ不明です。
内耳の水ぶくれの改善には利尿剤を、内耳の循環改善には循環改善剤やビタミン剤を使用します。めまいの改善にはめまい薬を、難聴に対してはステロイド剤を使う場合もあります。
メニエール病の原因は不明であるため、完全な再発の予防はできません。
ただし、メニエール病は過労やストレスで誘発されるため、これらを避け心身を安静にすることが非常に大切です。